Jアラート発出と情報訂正の経緯についての検証の必要性について
羽田次郎は、所属する外交防衛委員会に出席し、44分間の質疑をいたしました。
まずは、今朝の北朝鮮によるICBM級弾道ミサイル発射について、政府の対応の概要と情報訂正の原因等について説明を求めました。
「日本上空を通過したかどうか確認出来ていない」との答弁をうけ、Jアラート発出と情報訂正の経緯についての検証の必要性について政府に要望いたしました。
その他、本日の議題となった「防衛省設置法の一部改正案」についての質問等、政府に説明を求めました。
国会での審議を通じて国民の理解を得ることが大切であるという基本を忘れずに、今後も議論を深めてまいります。
羽田次郎
立憲民主・社民の羽田次郎です。
先ほど岩本委員も触れられましたが、私としても、今朝の北朝鮮によるICBM級の弾道ミサイル発射について、極めて遺憾であるということと、あと断固非難するということ、そして繰り返される北朝鮮のミサイル発射は断じて容認できず、政府においてはしっかりと御対応いただきたいということをまず申し上げたいと思います。
その上で、我々としては報道を見るしかない立場ではございますが、結果的にJアラートは情報訂正されたという報道を見ております。
政府は、七時五十五分頃、Jアラートを発出し、ミサイルが、同八時頃、北海道周辺に落下すると見られるとして避難を呼びかけました。
そして、海上保安庁も、八時頃、北海道周辺に落下するという情報を流されました。八時二十分頃、その可能性はなくなったと訂正されたということです。
防衛省は、八時五十分頃に、我が国領域に落下する可能性があるものとして探知し、北海道に落下する可能性のあったミサイルについては我が国領域への落下の可能性はなくなったことが確認されたという、そんなような内容でしたが、誤報自体を責める気はありませんが、こうしたこと、Jアラートの、何というか、間違った発出が繰り返されると信頼性が低下するというおそれがあると思うんですが、そこはしっかりと検証しなきゃならないと思います。
可能であれば、今回の政府の対応の概要を御説明いただいた上で、この情報訂正の原因等について、また、どの地域に落下したか、着弾したかということ、現時点で説明できることがあればお願いしたいと思います。
増田和夫 政府参考人
北朝鮮は、本日七時二十二分頃、北朝鮮内陸部から、少なくとも一発のICBM級弾道ミサイルの可能性がある弾道ミサイルを高い角度で東の方向に向けて発射したと見られます。
発射されました弾道ミサイルは我が国領域へは落下していないことを確認いたしました。
我が国EEZへの飛来も確認されておりません。これ以上の詳細は現在分析中であることを御理解いただきたいと思います。
そして、発射直後の情報に基づきますと、発射後、弾道ミサイルが我が国に落下することが予想されたことから、政府といたしまして、Jアラート及びエムネットにてその旨公表させていただきました。
その後、当該情報を確認したところ、当該ミサイルは北海道及びその周辺への落下の可能性がなくなったことが確認されましたので、改めて国民の皆様に情報を提供したところでございます。
今回の発射につきまして、防衛省から政府内及び関係機関に対して速やかに情報共有を行わさせていただきました。
現在までのところ、航空機や船舶からの被害報告等の情報は確認されておりません。
北朝鮮は、昨年から立て続けにミサイル発射を繰り返しまして、朝鮮半島そして地域の緊張を著しく高めております。
国際社会全体への挑発をエスカレートさせる暴挙であり、こうした一連の行動は我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすもので、断じて容認できるものではありません。
関連する安保理決議に違反するものであり、我が国として北朝鮮に対し、北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議し、強く非難いたしました。
いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、今般の北朝鮮のミサイルの発射につきましては詳細を現在分析中でありまして、詳細が分かりましたら改めて御説明させていただきたいと思っております。
羽田次郎
我が国の上空を通過したということは間違いないということでしょうか。
増田和夫 政府参考人
お答え申し上げます。
我が国の上空を通過したということは確認をしておりません。
羽田次郎
しておりませんということなので、また、そういう意味では、Jアラートの発出というのがどういう、何というんですかね、仕組みでなされるのか、前に詳しく質問された先生もいらっしゃったのである程度は理解しておるんですが、やはりこうしたことを繰り返されないようにしっかりとした検証をよろしくお願いいたします。
それでは、防衛省設置法の改正案について質問させていただきます。
今回の改正案は、総計としての自衛官定数に変更はないものの、統合幕僚監部の人員を八名増員し、米軍との連携、調整の円滑化に関する取組等を推進するとされています。
国家防衛戦略や防衛力整備計画では、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行い得る常設の統合司令部を創設することが掲げられています。
この統合司令部が発足することで、専任の司令官が統合運用の指揮を担うことになり、米国のインド太平洋軍司令部と緊密に連携することになると思われます。
自衛隊が米軍の指揮下に置かれるのではないかとの指摘も国会ではなされていますが、政府は一貫して、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動すると述べられています。
しかし、自衛隊の統合運用体制の強化が進むにつれて米軍の影響力が高まっていくことは否定できないと考えますが、この点について大臣の御認識を伺います。
浜田靖一 国務大臣
今回の防衛力の抜本的強化に向けた検討に当たっては、統合的な運用構想により我が国の防衛上必要な機能、能力を導いており、この観点から、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行い得る常設の統合司令部を速やかに創設することなどを通じ統合運用体制を強化することとしております。
御審議いただいている防衛省設置法の一部を改正する法律案においても、米軍との連絡調整機能を整備するほか、サイバー分野における連携強化のために、サイバー国際訓練、演習機能を整備するなど、統合幕僚監部の体制強化を図ることとしております。
こうした取組は日米間の連携を一層強化させるものですが、もとより自衛隊の全ての活動は米軍と独立した指揮系統により主体的に判断の下行われるものであり、御懸念には及ばないと考えております。
羽田次郎
ありがとうございます。
主権を有する独立国ですので当然の御答弁だとは思いますが、いざというときに米軍主導での運用にはなってしまうんじゃないかというふうにどうしても考えてしまいます。有事に前線で防衛に当たる自衛官の命を預かる防衛大臣として、是非責任ある御対応をお願いしたいと思います。
本改正案では、イージスシステム搭載艦の導入に係る要員を確保するために、海上自衛官を百二十一人増員するとされています。
このイージスシステム搭載艦は、二〇二〇年十二月の国家安全保障会議と閣議決定によって、陸上配備型であるイージス・アショアに替えて整備することが決定されました。
イージス・アショアは、ブースター問題を解決するためのシステム改修に多大なコストと改修期間が長期にわたることを理由に配備断念に至ったこともあり、政府として反省すべき点も多かったとの認識を示されています。
こうした経緯を踏まえて、政府は、イージス・アショアの配備プロセスの反省点に立ち返りながら、慎重な判断を行うべきだと考えます。
しかし、政府は、相変わらず、イージス・アショア関連経費との比較は困難との御答弁を繰り返しています。
本年度の防衛関係費には既に関連経費二千二百八億円が計上されていて、イージスシステム搭載艦は、二〇二七年度に一隻目、二〇二八年度に二隻目を導入するとされており、今後どれだけ経費が掛かるのか全く不透明です。
見積段階であっても現時点での総経費を示すべきだと考えますが、政府としていかがお考えでしょうか。
川嶋貴樹 政府参考人
お答え申し上げます。
イージスシステム搭載艦の総経費につきましては、令和五年度に実施する設計を通じまして今後船体の建造費が精緻化されること、令和五年度に調達する防空機能、水上レーダーなどです、や通信システム等のFMS装備品につきまして、システムインテグレーションに係る内容、経費に関しまして米国政府等と協議中でございまして、今後精緻化されること、こういった様々な要素を踏まえまして積算する必要があるということで、現時点で具体的な経費をお示しすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。
いずれにせよ、イージスシステム搭載艦は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、我が国を弾道ミサイルの脅威から保護することを主眼とするものでございまして、情勢に応じまして常時持続的に我が国全域を防護し得る体制の構築により一層貢献をするものでありまして、防衛力整備の一層の効率化、合理化の徹底を図りつつ、イージスシステム搭載艦の整備を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
羽田次郎
今の、今朝の状況とかも考えても、当然そのミサイル防衛システムというのが必要だということは十分理解できますが、ただ、先ほど申し上げたとおり、イージス・アショアの反省を踏まえれば、早い段階で総経費を示していただいて、国会での議論の中で問題点などを洗い出すべきだと考えますが、全く見通しが立たないのが現状という理解でよろしいでしょうか。
川嶋貴樹 政府参考人
五年度の予算の中に、先ほど申しました細部設計費用というものを積んでございます。
五年度がもう始まっておりますけれども、これで今後業者さんと、企業さんと契約をいたしまして、また防衛省にも、海上幕僚監部あるいは装備庁に造船設計の専門家がおります。
企業さんの力も借りながら、双方の力を合わせて細部の立派な設計をしていくということを志してございます。
これは五年度の予算でございますので、六年度には、まさにこの五年度の細部設計に基づきまして、艦船建造のための、船そのものの建造のための予算を求めていくという段取りになろうかと思われますので、したがって、そのときまでにはきちんとした形で費用の話をお話しできるようにする必要があるというふうに考えてございますので、ちょっとそのときまではなかなかお話し申し上げることができないんですが、まさに六年度予算を要求するに当たりましてはきちんとした数字を整えて対応してまいりたいというふうに考えてございます。
羽田次郎
システム設計等で二千億円以上というのはなかなか大きな金額だなとは思いますが、いずれにしましても、細部が決まりましたら早急に国会にお示しいただけたらと思います。
本改正案によって、米国が日本国内で装備品の調達や機体の定期整備等のため日本企業と契約するような場合に、地方防衛局が品質管理業務を実施できるようになります。
これに伴う日米間の相互政府品質管理の枠組みにおいて、日本が米国からFMS調達する際に、品質管理に係る契約管理費の〇・四五%の減免を受けられると試算されておりまして、我が国の負担が減る仕組みについては推進すべきじゃないかと考えております。
他方で、FMS調達そのものの予算額は増加傾向にありまして、今年度は、前年度の三千七百九十七億円に比べて一兆円以上増額となる一兆四千七百六十八億円に達しました。品質管理費が低減したとしても、FMS調達額が高止まりしてしまっては、引き続き我が国の財政を圧迫することになります。
地方防衛局の新たな任務追加に伴い、増加傾向にあるFMS調達そのものの削減も必要と考えますが、浜田防衛大臣の御見解をお願いします。
浜田靖一 国務大臣
防衛力の抜本的強化に際しては、国民の命を守り抜けるのか極めて現実的なシミュレーションを行い、必要となる防衛力の内容を積み上げました。積み上げに当たっては、米国製であれ国内製であれ、今後の我が国の防衛に必要な装備品を個別に検討し、我が国の主体的な判断の下に決定をしております。
厳しい安全保障環境を受け、高性能な装備品について早期導入を求められる傾向にあり、結果としてFMS調達が増加しておりますが、これは、我が国を守るために必要不可欠な装備品の中にはFMSでしか調達することができないものがあるためであります。
FMS調達については、防衛大臣レベルでの米国への働きかけも含め、価格上昇の抑制に向けた取組の推進など、FMS調達の合理化に向けて積極的に取り組んでいるところであり、引き続き、米国としっかりと交渉をし、必要な装備品を適正な価格で調達できるよう努めてまいりたいと考えております。
羽田次郎
是非、そうした取組、しっかりと進めていただきたいと思います。
次に、先日の委員会で申し上げたとおり、引き続き安保三文書について質問させていただきます。
私、今国会、当委員会ですとか決算委員会で、先ほどもありましたが、北朝鮮の核・ミサイル問題を質問してきました。この間、北朝鮮は多くの種類のミサイルを多数発射しておりまして、国家安全保障戦略でも、かつてない高い頻度で、新たな態様で繰り返し発射し、その能力を増強していると記されています。
北朝鮮は現在どのような種類のミサイルを持ち、それがどのように我が国にとっての脅威になっているか、防衛省に伺います。
増田和夫 政府参考人
お答え申し上げます。
北朝鮮は、短射程のものから、米国全土を射程に収める長射程のものまで、様々な射程の弾道ミサイルを開発、保有しているほか、発射台付車両、TELと称しておりますけれども、そのほかにも、潜水艦、鉄道といった様々なプラットフォームから弾道ミサイルを発射する能力を有しております。
また、北朝鮮は、技術的には、我が国を射程に収める弾道ミサイルに核兵器を搭載し、我が国を攻撃する能力を既に保有しているものと見られます。
金正恩氏の父親である金正日氏が最高権力者であった間に発射した弾道ミサイルの数は十七年間で十六発でございましたが、北朝鮮は、金正恩氏の下、これまで、その可能性があるものを含め、これまでの十一年間で少なくとも、本日のもの含めまして百六十二発の弾道ミサイルの発射を強行してございます。
こうした北朝鮮の軍事動向は、我が国の安全保障にとって従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものと認識してございます。
羽田次郎
ありがとうございます。
本当に繰り返し繰り返しミサイル発射行われていますし、核実験の懸念もございますので、私としても今後もこうした状況を注視してまいりたいと思います。
政府は、四月七日の閣議決定で、北朝鮮に対する日本の独自制裁、すなわち、北朝鮮籍の船舶等の入港禁止ですとか、日朝間の輸出入禁止などの措置を二年間延長すると決定いたしました。
この対北朝鮮制裁措置を延長した理由というのは、北朝鮮の核・ミサイル開発への対抗措置としての判断なのか、若しくは、拉致問題という最重要課題もありますが、拉致問題に対する北朝鮮の不誠実な対応への制裁でもあるということでしょうか、お答えください。
岩本桂一 政府参考人
お答えいたします。
先ほど来御議論いただいていますこの北朝鮮の弾道ミサイルの発射、これは我が国の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威でございます。
北朝鮮は、累次の安保理決議が求めている完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄を行っておりません。
また、先ほど委員が御指摘のありました拉致問題につきましても、北朝鮮からは解決に向けた具体的な動きが示されていないところでございます。
こうした諸般の情勢を総合的に勘案いたしまして、また安保理決議の履行を担保するという観点も踏まえまして、今般、対北朝鮮措置として実施している入港禁止措置そして輸出入の禁止措置の期限を二年間延長することとさせていただいたものであります。
羽田次郎
総合的な判断の下でということだと思いますが、制裁と同時に、やっぱり被害者救済のために対話のチャンネルを開いておくことも重要ですので、引き続きそうした姿勢を定期的に示すこともお願いいたします。
四月七日に韓国ソウルにて、北朝鮮に関する日米韓協議が実施されました。
協議の終了後、北朝鮮に関する日米韓三か国共同声明が発出されましたが、共同声明を発出した意義を林大臣にお伺いします。
林芳正 国務大臣
四月の七日でございますが、韓国ソウルにおきまして、北朝鮮に関する日米韓協議が実施され、我が方から船越アジア大洋州局長、それからソン・キム米国北朝鮮担当特別代表及び金健韓国外交部朝鮮半島平和交渉本部長がそれぞれ出席いたしまして、日米韓三か国共同声明が発出されたところでございます。
この共同声明におきまして、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向け、日米韓の安全保障協力を含む地域の抑止力強化、安保理における対応や同志国との協力を含む国際連携、サイバー分野における対応等につきまして、日米、日韓、日米韓の緊密な連携、これを確認できたことは大変意義のあることだと考えております。
また、拉致問題の即時解決を実現するために協働していくことについても一致したところでございます。
我が国としては、今後とも、日米、日韓、日米韓を含む国際社会とも協力しながら、関連する安保理決議の完全な履行を進めて北朝鮮の非核化を目指してまいります。
羽田次郎
ありがとうございます。
日本単独では、残念ですが、なかなか拉致問題についての進展が見られませんでしたので、この多国間の枠組みで何らかの進展があることを期待しております。
三月十六日の日韓首脳会談では、国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき、関係を更に発展していくことで一致し、政治、経済、文化など多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活性化していくこととなりました。
日韓の安全保障協力について、国家安全保障戦略で、北朝鮮への対応等を念頭に、安全保障面を含め、日韓、日米韓の戦略的連携を強化していくと明記されておりまして、日米韓の枠組みについて、これまで、北朝鮮によるミサイル発射への対応を念頭に、様々なレベルで協議が開催されていると承知しております。
日韓の枠組みについて、先般の首脳会談で、日韓安全保障対話、それと日韓次官戦略対話を早期に再開することで一致しておりますが、日韓の戦略的連携がどのように強化されるのか、外務省の見解を伺います。
岩本桂一 政府参考人
ただいま委員御指摘のとおり、韓国は、国際社会における様々な課題への対応で協力していくべき重要な隣国でございます。特に、北朝鮮への対応を含めて現下の戦略環境を踏まえれば、日韓、日米韓三か国で緊密に連携していくこと、これは大変重要でございます。
今御指摘の先般の日韓首脳会談において両首脳は、両国が共に裨益するような協力を進めるべく、政治、経済、文化など多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活性化していくことで一致しております。
まさにその一環としまして、この安保対話、そして次官戦略対話の再開などを進めていくこととしておりまして、現在、対話の早期実施に向け調整を加速しているところでございます。
また、安全保障分野を含め、様々な政策分野における各省庁による日韓両国の間の対話、これも積極的に後押ししていく考えでございます。
こうした取組によって具体的な協力に向けた環境を醸成し、日韓関係の前向きな機運を確かなものにしていきたいと考えております。
羽田次郎
本当に隣国とのしっかりした共通意識を持って今後国際社会の様々な問題に取り組んでいくということは非常に大切だと思うんですが、ただ、旧朝鮮半島出身労働者の訴訟問題をめぐりましては、今月三日に韓国地裁が三菱重工業の特許権四件の差押えを認める決定を出して、今後現金化の手続を進めると報じられております。
日本企業の資産差押えの動きに関しても韓国政府に対して適切に対処するよう働きかける必要があると考えますが、林大臣の御見解を伺います。
林芳正 国務大臣
今御指摘のあった報道、これは承知しておりますが、その一つ一つにコメントをすることは差し控えたいと思います。
その上で申し上げますと、旧朝鮮半島出身労働者問題につきましては、三月に韓国政府による措置が発表されました。
政府としては、今後、韓国政府が国内のプロセスを行い、同措置を着実に実施していくことを期待をするところでございます。
また、この措置の実施とともに、日韓の政治、経済、文化等の分野における交流、これが力強く拡大していくことを期待をするところでございます。
羽田次郎
ありがとうございます。
今月二日の日中外相会談で林外務大臣は、秦剛外交部長に対して、台湾海峡の平和と安定の重要性について述べるとともに、南シナ海の状況に対する深刻な懸念を改めて表明されました。
しかし、三月末から四月五日にかけて台湾の蔡英文総統が中米二か国の首脳や米国のマッカーシー下院議長などと会談を行った後、今月八日から十日にかけて、中国軍が台湾海峡と台湾の北部、南部、東部の海域や空域でパトロールと軍事演習を行い、台湾海峡の中間線を越える戦闘機や台湾南西沖の防空識別圏に進入する戦闘機もあったと確認されております。
国家安全保障戦略に、中国は、台湾について平和的統一の方針は堅持しつつも、武力行使の可能性を否定していないとの記載があり、国家防衛戦略では、中国は、台湾周辺での一連の活動を通じ、中国軍が常態的に活動している状況の既成事実化を図るとともに、実戦能力の向上を企図していると見られるとの記載がありますが、今回の中国の動きをどのように分析して評価されているのか、林大臣に伺います。
林芳正 国務大臣
御指摘の中国による軍事演習については、政府として、一貫して大きな関心を持って注視をしております。
その分析、評価についてつまびらかにすることは差し控えたいと思います。
その上で、この台湾海峡の平和と安定、これは、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であります。
今お触れいただきましたように、こうした立場から、先般の私の訪中の際も、私から秦剛部長に対して台湾海峡の平和と安定の重要性について述べたところでございます。
また、この先般行われた日中高級事務レベル海洋協議におきましても、本件も含めて、日本側から中国側に対し、我が国周辺海域における中国の活発化する軍事活動に対し深刻な懸念、これを改めて表明するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性について改めて提起をしたところでございます。
我が国としては、今後とも、関連の動向を注視してまいります。
羽田次郎
防衛省として何か分析とか評価ありましたら、お願いします。
増田和夫 政府参考人
中国は、四月八日から十日までの間、台湾周辺の海空域において、台湾を囲む形で軍事演習を実施した旨発表していると承知しております。
当該演習について、中国は、空母山東や多数の艦艇、空母艦載機や中国本土からの大量の戦闘機などを参加させたと見られ、また、制海権、制空権の獲得を奪取する検証を行い、台湾を全方位から取り囲んで威嚇、制圧の態勢をつくり上げたなどと主張しており、威圧的な訓練であったと認識しております。
中国は、今回の活動について、訓練につきまして、台湾独立分離主義勢力が外部勢力と結託して挑発することに対する重大な警告である旨述べていると承知しておりまして、中国は台湾問題で妥協をしない姿勢を示したものと考えられます。
防衛省・自衛隊としては、引き続き関連の動向を注視するとともに、我が国周辺海空域における警戒監視活動等に万全を期してまいりたいと思います。
羽田次郎
しっかりと分析そして監視を行っていただきたいと思います。
次に、政府安全保障能力強化支援、OSAについて、昨年八月末の令和五年度予算概算要求の時点で事項要求にとどまって、具体的な内容、金額は示されませんでした。
ただ、昨年末の予算決定の時点で、同志国の安全保障能力強化を支援するための経費として二十億円が計上されていることは、先日、佐藤先生からもお話あったと思います。
そして、報道によれば、非軍事に限られるODAでは、途上国の軍が担う沿岸警備や軍民共用の湾港、空港に対する支援ができず、日本政府には途上国のニーズに十分に応えられていないとの声が根強くあったとされていますが、これまで途上国からどのようなニーズが伝えられていたのか、また、何かきっかけとなるような出来事があったのかを含めて、OSA創設の経緯について伺います。
石月英雄 政府参考人
お答え申し上げます。
我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれている中で、力による一方的な現状変更を抑止して、特にインド太平洋地域における平和と安定を確保し、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するためには、我が国自身の防衛力の抜本的強化に加え、同志国の安全保障能力の向上、抑止力の向上をさせることが不可欠でございます。
こうした観点から、軍等に対する資機材供与、インフラ整備等を通じて同志国の安全保障上の能力、抑止力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際的な平和と安全の維持強化に寄与することを目的として、ODAとは別に、新たな無償による資金協力の枠組みを導入したものでございます。
この支援枠組みにつきましては、昨年十二月十六日に閣議決定された国家安全保障戦略に盛り込まれ、令和五年度予算、外務省予算に二十億円が計上されているところでございます。
また、本年四月五日にOSAの実施方針を国家安全保障会議で決定し、公表したところでございます。
本件支援枠組みはこのような経緯で創設したものでございます。
特定の事象が契機となったということではございません。
羽田次郎
このOSAの対象国や案件の検討に当たって、政府は、今後、フィリピン、マレーシア、バングラデシュ及びフィジーを対象として、警戒監視等の海上安全保障分野の能力向上に資する機材供与を想定した専門的な調査を外部事業者に委託して行うことを考えているということですが、委託調査の対象国としてこの四か国が考えられている理由について伺います。
石月英雄 政府参考人
お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、令和五年度につきましては、まずはフィリピン、マレーシア、バングラデシュ、フィジーを対象とした調査から開始することとしております。
これらの調査対象国の選定は、まず、OSAの目的に照らした支援実施の意義、日本として把握している各国のニーズ、各国の経済社会状況等を総合的に勘案して判断したものでございます。
特に、日本のシーレーンの要衝に位置するなど、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出の観点からの重要性、また地域の安全保障にとっての重要性、さらに我が国との安全保障協力関係強化の重要性等を考慮いたしました。
その過程におきましては、国家安全保障局や防衛省を始めとする関係省庁とも協議を行いつつ、支援対象国、分野を一定程度絞り込んだ上で相手国政府とも協議を行ったところでございます。
今後、御指摘の四か国に対し、専門的な調査を外部事業者に委託して行った上で、調査の結果を受けて、相手国とも更に調整を行った上で最終的に対象国を決定することとなります。
羽田次郎
じゃ、まだ確定はしていないという理解でよろしいんですかね。
この防衛装備品の海外移転については、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援等のための重要な政策的な手段となるとした上で、三つの原則そのものは維持しつつ、防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討すると記載されています。
どのような防衛装備品の輸出が、どのように我が国にとって望ましい安全保障環境の創出のための政策手段となるのでしょうか。
それから、我が国がウクライナに対し実施した非殺傷の防衛装備品等の供与では、国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援等のための政策的な手段として不十分との認識でしょうか。
防衛省に伺います。
土本英樹 政府参考人
お答え申し上げます。
ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を脅かすものであり、断じて認められず、我が国としても、平和秩序を守り抜くため、国際社会と結束し、断固たる決意で対応してきており、防衛省といたしましてはこれまで、自衛隊法に基づき、防衛装備移転三原則の下、防弾チョッキを始めとする装備品等を提供してきております。
その上で、国家安全保障戦略に記載しているとおり、防衛装備品の海外への移転は、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的な手段となります。
委員御指摘の、どのような防衛装備品の輸出が政策的な手段となるのかといった点や、ウクライナに対して実施した防衛装備品等の供与では政策的な手段として不十分かといった点に関しましては、防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しの内容に関わるものであり、現在検討中の段階であることからお答えすることが困難であることは御理解いただきたいと思います。
いずれにいたしましても、防衛省といたしましては、先ほど申し上げた点を踏まえ、引き続き関係省庁とともにしっかりと議論してまいる所存でございます。
羽田次郎
まだお答えすることが難しいというお話ですが、与党には、五月のG7広島サミットに向けて、防衛装備移転三原則や運用指針の見直しを図って、G7各国と友好国、そしてウクライナに対して我が国の意思を示すべきであるという意見があると承知しておりますが、政府として、サミットまでに防衛装備移転三原則に係る制度の見直しをするおつもりでしょうか。
また、同制度見直しについては、我が国の平和国家としての在り方を踏まえると、国会における議論も含めた形で慎重に議論することが求められるのだと考えますが、浜田大臣の御見解を伺います。
浜田靖一 国務大臣
防衛装備品移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しの具体的なスケジュールについては現時点では決まっておりませんが、防衛省としては、引き続き、関係省庁とともにしっかりと議論してまいりたいと思います。
その上で、御指摘の点について、防衛装備移転三原則や運用指針を含め、我が国の政策については国際社会や国民の皆様の御理解を得ることは重要であると考えており、国会における質疑などを通じて適切に説明してまいりたいと考えておるところでございます。
羽田次郎
まさに国民の理解が得ることは非常に大切だと思いますので、是非とも今後とも国会での議論をお願いしたいと思います。
国家安全保障戦略にある防衛力の抜本的強化を補完する取組について伺いたいと思いますが、資料一の一、一の二、一の三のとおり、三月三十一日の本委員会で小西理事の質疑に対して、補完する取組の内容と金額に関する答弁がありましたが、海上保安庁予算やPKO関連経費などで〇・九兆円程度という御答弁でした。
この補完する、関連経費などの、このなどにはどのような経費が含まれているのか。例えば、かつてNATOを参考にした防衛費の試算においては恩給費も含まれていたものと思われますが、網羅的に個々の内容と金額をお示しいただければと思います。
室田幸靖 政府参考人
お答えを申し上げます。
お尋ねの二〇二七年度における防衛力の抜本的強化を補完する取組の経費の内訳についてでございますけれども、もとよりこれは五年後のことでございますので、現時点での確定的なことをお答えすることについてはもとより困難ではございます。
また、補完的取組に関しては、具体的にどのような経費が我が国防衛に資するかについて様々な御議論があるとも承知をしておりますけれども、その中におきまして、前回の答弁におきまして、歴代の政権でこれまでのNATO定義を参考にしつつ、安全保障に関する経費として仮に試算をしてきた項目があるということを申し上げた上で、これが、海上保安庁予算、PKO関連費などが〇・九兆円という答弁をさせていただいたところでございます。
御質問はこのなどの内訳ということかと思いますけれども、まず〇・九兆円の根拠につきまして申し上げますと、こういった先ほど申し上げた項目の令和五年度における予算が〇・八兆円となっておること、また、このうち海上保安庁予算については令和九年度までに現在の水準からおおむね〇・一兆円程度の増額が決定されていると、こういったことを踏まえての数字となっております。
さらに、このなどの内訳でございますけれども、先ほど申し上げたような条件があるという前提で歴代の政権でこれまで仮に試算してきた項目を申し上げますと、例えば、恩給費、弾薬の処分等関連経費など旧軍人軍属等や旧軍兵器に関するもの、国連PKO分担金などのPKO関連経費、海上保安庁、内閣衛星情報センターなどの安全保障関連組織の関する経費、防衛駐在官人件費などの自衛隊関連経費、基地交付金などの在日米軍の駐留に関する経費などが念頭に置かれた試算となっているということを申し上げさせていただきます。
羽田次郎
いずれにしましても、まずこうした、今後も安保三文書に記載された施策を実施するために様々な法案が審議されていきますが、しっかりと内訳などもお示しいただいて、今後しっかり我々が判断できるような情報も提供していただくことをお願いいたします。
残り時間の関係上、少し飛ばしまして、トルコ共和国における国際緊急援助活動について質問させていただきます。
防衛省・自衛隊は、今年二月六日に発生したトルコ南東部を震源とする地震による被害を受け、まず特別輸送機一機により国際緊急援助隊医療チームの活動に必要な機材等を輸送したと承知しております。
さらに、三月には、トルコ政府とNATOからの協力要請を踏まえ、空中給油・輸送機一機によりパキスタンにある緊急援助物資をトルコに輸送しました。
トルコ政府とNATOから協力要請が来たのはいつ頃で、そしてトルコ政府に加えてNATOから協力要請がなされた背景について伺います。
中村仁威 政府参考人
お答えいたします。
今回実施いたしましたトルコへの自衛隊機による災害救援物資の輸送支援につきまして、具体的な要請は、二月の二十四日にNATOから、翌二十五日にトルコ政府から、それぞれ書面をもって行われたところでございます。
日本とNATOは信頼できる必然的な、必然のパートナーでございまして、本年一月のストルテンベルグ事務総長が来日した際にも、岸田総理や林外務大臣との間で日・NATO間の協力を更に強化する必要性を改めて確認したところでございますが、日・NATO間では国別パートナーシップ協力計画という文書がございます。
そこにおきましても、人道支援、災害救援などの分野で実務的協力を深めていくことが記載されているところでございます。
羽田次郎
自衛隊の実運用に関して、NATOと協力を実施するのは今回が初めてというふうに理解しておりますが、NATOの要請に応じて緊急援助物資を輸送することについて、パートナー国というような話もありましたが、パートナー国というのはそもそもどのような立場なのか、一言御説明いただければと思いますが、いかがでしょう。
浜田靖一 国務大臣
自衛隊の実運用に関し、NATOとの協力を行ったのは今回のトルコにおける国際緊急援助活動が初めてであります。
日本とNATOは信頼できる必然のパートナーであり、本年一月のストルテンベルグ事務総長の訪日の際にも、岸田総理と日・NATO間の協力を更に強化する必要性を改めて確認しております。
また、日・NATOの間の国別パートナーシップ協力計画においても、人道支援、災害救援等での実務的協力を深めていくこととされております。
今回、自衛隊は、その経験や能力を生かし、NATOとの連携して、トルコの人々に対して迅速かつ確実に緊急援助物資の輸送活動を実施することができました。
今回の活動に対してはトルコ政府及びNATOから高い評価と謝意が示されており、トルコとの関係のみならず、日・NATOのパートナーシップの一層の深化につながったと考えております。
羽田次郎
時間となりましたのでこれで終わりますが、残りの質問、またさせていただきます。
ありがとうございました。