参議院 外交防衛委員会

2022年3月8日の「参議院 外交防衛委員会」にて行われた質問です。

外交、防衛等に関する調査 (外交の基本方針に関する件) (国の防衛の基本方針に関する件)

プーチン政権によるウクライナ侵攻に対する怒りと、昨日まで普通の生活をしていた普通の国民が、翌日には避難民や兵士になってしまう恐ろしさ、ウクライナ国民への連帯の思いなどを述べた上で、外務大臣、外務省、防衛省に対して、関連質問をさせていただきました。

質問の様子はYoutubeで公開されていますので、ご確認ください。

質問内容

羽田次郎

立憲民主・社民の羽田次郎です。
今日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 連日の報道やソーシャルネットワークの情報により、私たち日本国民もロシア軍によるウクライナ侵略を目の当たりにしており、外交と防衛の問題について国民の間でも非常に関心が高まっていることを感じています。
ここ外交防衛委員会においても、どのようにすれば一方的な軍事侵攻を食い止められるか、平和な世界を取り戻すために日本だからこそできること、日本だからこそやらなければならないこと、これを議論する必要があると私自身も思いを新たにしているところです。

 おとといの日曜日、私は地元長野駅周辺でウクライナ難民を支援するための募金活動を行いました。
昨日まで幸せな生活を送っていた普通の市民が今日は銃を手に取り、また国を追われ、難民になってしまうという現実に戦慄を覚えると同時に、暴力による日常の破壊に怒りを感じております。
そして、今現在も戦火の中で苦しむウクライナ国民の皆様に連帯の気持ちをささげたいと思います。

 一方で、全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を慎まなければならないという国連憲章の条項をあっさりと破ってしまう国連常任理事国ロシアのプーチン政権に対して厳しく対峙する政府の方針には私も賛同しております。

 ウクライナ国民は老若男女を問わず武器を取り、ロシアの侵略に立ち向かっています。
文字どおり、命懸けの祖国防衛をしており、今も孤軍奮闘してロシア軍の攻撃を食い止めています。

 第二次大戦の序盤戦でパリが陥落し、次はロンドンだと危ぶまれていたとき、当時の英国首相ウィンストン・チャーチルが発した言葉を今思い出さずにはいられません。
戦い敗れた国は再び起き上がれるが、おとなしく降伏した国に未来はない。
しかし、戦闘が一日長引けばそれだけ犠牲者が増える。一刻も早くロシアの侵略行為をやめさせて、これ以上の犠牲者を増やさないよう最善を尽くすことは、国際社会の一員として我が国の責務であると考えます。

 フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、トルコのエルドアン大統領、イスラエルのベネット首相、そして昨日は中国の王毅外相も停戦仲介の意向を表明しました。
残念ながら、積極外交を行う日本の姿がなかなか見えてきません。

 まず岸田総理か林外務大臣がモスクワに足を運び、プーチン大統領と直談判をする、若しくは、首相在任中にプーチン大統領との信頼関係を醸成したと評されている安倍元首相や森元首相を特使としてロシアに派遣するような外交努力を日本政府としては行わないのでしょうか。
マレーシアも大事だとは思いますが、ロシアに特使を派遣するのであれば、首都キエフが包囲されようとしている今すぐではないでしょうか。外務大臣のお考えをお聞かせください。

林芳正 国務大臣

今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状の変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。
明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。

 今こそ、今委員からもお話があったように、国際秩序の根幹を守り抜くためには、国際社会が結束して毅然と行動しなければならないと考えております。
我が国としてこのことを示すべく、断固として行動をしてまいります。こうした暴挙には高い代償が伴うということを示していかなければならないと思っております。

 こうした考え方の下で、我が国はG7を始めとする国際社会と緊密に連携をし、迅速に厳しい措置を打ち出してきております。
外交努力ということでいろんな御指摘がありましたけれども、現時点で特使を派遣するという考えはなく、また、今後の対応を予断することは差し控えたいと思いますが、引き続き、今後の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携し、有効と考えられる取組、これを適切に検討、対応してまいりたいと考えております。

羽田次郎

御答弁ありがとうございます。

 やはり、日本の顔を見せるためにも、是非特使を派遣する、若しくは外務大臣自ら足を運んでいただくような外交努力をしていただければと思います。

 次に、日本政府はロシアの暴挙に高い代償が伴うことを示していくとの考えで強い経済制裁に踏み込んでいます。
経済制裁は、子供、高齢者、病人、低所得者、失業者など、社会的な弱者により大きなダメージを与えてしまいます。
通貨ルーブルの相場も大暴落しており、ロシア国内でも社会的弱者に大きな苦しみを強いているのは明白です。

 そこで、外務大臣のお考えをお聞きいたします。

 日本政府としては、戦争を止めるためには一般国民に苦しみを与えることもやむを得ないという判断なのでしょうか。
人間の安全保障を日本の外交の柱に据えるとした方針はもう昔の話なのでしょうか。お答えをお願いします。

林芳正 国務大臣

今回のロシアによるウクライナ侵略、これは、先ほども申し上げましたように、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序を揺るがす行為であります。
やはり、この秩序の根幹を守り抜くためには、国際社会は結束して毅然と行動しなければならないと考えております。

 今回の事態を受けて、我が国国民だけではなくてロシア国民にも様々な影響が及ぶということは避けられないと考えますけれども、先ほど申し上げましたこの大きな目的のために、引き続き、今後の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携して適切に取り組んでまいりたいと考えております。

羽田次郎

私の方も繰り返しとなりますが、やはり日本らしい外交というのを是非続けていただければと思っております。

 この週末、在日ウクライナ人やロシア人のお話を伺いました。
町中やソーシャルネットワークではロシア人に対する差別的な言葉が増え、大きな不安を感じているそうです。
その一方で、在留ロシア人のSNSのサイトの一部には、日本に対する反感や過激な言葉も散見するとのこと。
もちろん、ウクライナ侵攻に反対しているロシア人も多いですが、独裁的な指導者に反対の声を上げる恐怖とロシアを敵視する国際世論に反発するロシア国民の声もあり、不用意に声が上げられないとも聞いております。
さらに、ロシア国内では言論弾圧やメディア規制が始まっており、既に罰則付きの法制化もされました。

 早期にロシア軍による攻撃を終結させるには、ロシア国民が声を上げることも重要だと考えます。
善良なロシア国民に対しては、あなた方が敵なわけではないというメッセージを送り、ロシア国民がロシア政府に反対の意思を示すことを国際社会として支持する姿勢を示すことも必要だと考えます。

 そこで質問です。
日本政府として、特に日本国内に在留するロシア人に対する発信や取組はありますか。

宇山秀樹 政府参考人

お答え申し上げます。

 今回のこの侵略、これはプーチン政権によるウクライナ侵略でございまして、日本国内に居住するロシア国民の方々からも侵略に反対する声が上がっていると承知しております。

 我が国の立場につきましては、これまでも岸田総理、林大臣始め様々な機会に積極的に発信してきておりますけれども、委員の御指摘も踏まえまして、この日本国内のロシア人向けに何らかの発信をするということについても検討してまいりたいと思います。

 その関連で、委員から御指摘のあったとおり、このロシア人一般に対するこのヘイトスピーチが今SNS等で拡散しているといったことはこれは大変憂慮すべきことでございますので、この機会に日本国民の皆様に対しまして、日本に居住する一般のロシア人の皆さんをロシア人であるという理由だけで排斥するようなことは控え、冷静な対応をしていただくように呼びかけたいと思います。

羽田次郎

しっかりした前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 今日は国際女性デーですが、それに先立つ三月五日にプーチン大統領は女性グループとの懇談の場で経済制裁は宣戦布告に近いというような発言をされ、その映像が報道されています。

 日本の領土、領空、領海、そしてサイバー空間において挑発や攻撃が行われるような兆候はあるでしょうか。

増田和夫 政府参考人

御指摘のプーチン大統領の発言については承知しております。

 そして、防衛省といたしましては、今般のウクライナ侵略を含め、またサイバー空間における動向を含めまして、ロシアの動向について重大な懸念を持って情報収集、警戒監視を行っているところでございます。

 例えば、ロシア海軍は二月以降、オホーツク海等において大規模な海上演習を行っております。
これは、ウクライナ周辺におけるロシア軍の動きと呼応する形でロシア軍が東西で活動し得る能力を誇示しているものではないかと思われます。
また、二月には、戦略核及び非核戦力による戦略抑止力演習を実施いたしまして様々なミサイルを発射した旨発表いたしましたが、このうちICBM、大陸間弾道ミサイルなどにつきましては極東のカムチャツカ半島に着弾させたとしております。
さらに、三月二日には、北海道根室半島沖におきましてロシアのヘリ一機が領空侵犯したことを確認しております。

 このように、現下の情勢下におきまして、我が国周辺海空域におきましてもロシアの活動が活発化しているということは懸念すべきものでありまして、防衛省といたしまして、引き続き緊張感を持ってロシア軍の動向について情報収集、警戒監視を行ってまいりたいと思っております。

羽田次郎

先ほど同僚の小西委員からもお話ありましたとおり、北方四島、日本固有の領土としてやはりしっかりと守り抜くためにも、是非警戒をされることをお願い申し上げます。

 日本政府は、緊急人道援助として一億ドルの拠出を決定いたしました。
一億ドルと決めた根拠は何かございますか。
また、国際機関を通じての拠出とのことですが、どの機関にどれくらいの金額を拠出するのか、可能な範囲内で教えていただければと思います。

植野篤志 政府参考人

お答え申し上げます。

 今回のウクライナ情勢を受けて、国連から、主に保健医療、食料、難民・避難民の保護といった分野でウクライナの国内向け及び周辺国向けの支援として総額約十七億ドルの支援の要請、アピールが出されておりまして、我が国が表明いたしましたこの一億ドルの緊急人道支援に関しては、その国連のアピールに応えるべく、かなりの部分を我が国として負担するということで決めたものでございます。

 現在、この国連の支援アピールを踏まえまして、UNHCR、国連難民高等弁務官事務所、あるいはユニセフといった人道関係の国際機関と具体的な支援の内容について調整をしているところでございまして、できるだけ早くこれを決めて迅速に実施をしていきたいと考えております。

羽田次郎

御答弁ありがとうございました。

 本当に困っている子供やそして難民の皆さん、一刻も早く支援を送れるようよろしくお願い申し上げます。

 それとは別に、ウクライナ政府の要請に応じて、食料、衛生用品、防寒具、発電機、防弾チョッキなどを輸送、配布すると報道されていますが、実際のところ、どんな物品をどのくらい、どのような手段でどこへ輸送するのか、これも可能な範囲で教えてください。

萬浪学 政府参考人

お答え申し上げます。

 現在、我が国はウクライナ政府からの、御指摘ございましたけど、要請を踏まえまして、防弾チョッキ、ヘルメット、防寒服、天幕、カメラ、あるいは衛生資材、非常用糧食、発電機を自衛隊機等によりまして提供することにつき、今調整しているところでございます。

 これらの装備品につきましてはウクライナ政府に提供する予定でございまして、その先、ウクライナ政府の適切な管理の下、使用、配布されることになります。

 これ以上の細部につきましてはお答えできる段階にはございませんが、要請のありました装備品等を迅速に提供することは、ウクライナの国民を最大限支援することに寄与するとともに、国際社会の連帯を示すものでございまして、政府内外の関係者との調整や検討を加速してまいりたいと考えてございます。

羽田次郎

それでは、短く、時間が短いですが、岸田総理が度々言及する新時代リアリズム外交とはどんな外交なのかということを是非、林外務大臣に教えていただけたらと思います。

林芳正 国務大臣

ロシアによるウクライナ侵略を含めて、厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、岸田内閣として、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、一方で、したたかで徹底的な現実主義、これを貫く外交を展開をしてまいります。
これが新時代リアリズム外交でございます。

 私の所信でも、日米同盟を基軸に世界の日本への信頼と三つの強い覚悟、すなわち、普遍的価値を守り抜く覚悟、我が国の平和と安定を守り抜く覚悟、地球規模の課題に向き合い、国際社会を主導する覚悟を持って、対応力の高い低重心の姿勢で日本外交の新しいフロンティアを切り開いていくと述べました。
この対応力の高い低重心の姿勢は、新時代リアリズム外交につながっていると考えておるところでございます。

羽田次郎

時間となりましたので、以上で私の質問を終わらせていただきます。

ありがとうございました。

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