外交防衛委員会 林外務大臣に質疑

令和5年度予算成立から2日後の本日、羽田次郎は、所属する外交防衛委員会に出席し、林外務大臣に質疑を行いました。

今年は、日中平和友好条約締結45周年。さまざまな懸案がある中、今週末、3年ぶりとなる外務大臣の訪中が予定されています。どのように『建設的かつ安定的な関係』を築いていくのか具体的方針について尋ねました。

また、4月16日から18日に予定されている地元軽井沢町でのG7外相会合が、軽井沢町議選の告示日と重なっているため、参加国に事前にご説明いただくよう要請しました。

羽田次郎

立憲民主・社民の羽田次郎です。

 まず、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の改正案について伺います。

 在外公館の位置の地名の変更について、キーウは二〇二二年三月三十一日、キシナウは同年五月十三日に呼称の変更が発表されました。外務省のホームページによれば、この呼称変更は、ロシアによる侵略を受け、日本政府としてウクライナやモルドバとの連帯を示すための行動であったとのことですが、そうであれば、法律での呼称も早々に昨年の臨時国会時点で改正すべきだったのではないでしょうか。

 昨年の呼称変更から今回の改正までおおよそ一年もの期間が空いたことになりますが、これほどの時を要した理由について外務省に伺います。

志水史雄 政府参考人

お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、このウクライナの首都キーウ、それからモルドバの首都キシナウの呼称について、それぞれ令和四年、昨年三月及び五月に外務省として地名を呼称する場合のこの呼称の変更は行ったところでございます。

 その上で、今回の在外公館名称位置給与法においてこれらの地名の変更を法改正として審議をお願いしているところでございますけれども、この名称位置給与法といいますのは、国名及び地名そのものを直接定めることを目的とした法律ではございません。
一般的には、毎年一回、予算との関係で、在外公館に勤務する職員の給与が改定されるタイミングに合わせて基本的には常会で御審議いただいているというものでございます。

 こうした事情がございますので、今回の改正におきまして地名の変更を改正の内容と含めることで御審議いただいているところでございますけれども、その当省が用いている地名の変更そのものにつきましては委員御指摘のとおりでありまして、昨年三月及び五月に変更したということで御理解いただければと存じます。

羽田次郎

丁寧な説明をありがとうございました。
理解いたしました。

 次に、在勤基本手当の基準額改定について小西筆頭から質問ございましたので、そこは飛ばしまして、子女教育手当について、授業料の上昇により、子女教育手当が支給されている在外公館の職員の半数程度について、加算額の上限である四万三千円を加算しても経費を賄うことができないと伺っております。

 今回の引上げにより上限額が五万一千円となりますが、授業料も物価、為替変動の影響を受け上昇が続くことも予測されますが、今後の子女教育手当の加算額の上限をどのように設定されていかれるのか、外務省の方針を伺います。

志水史雄 政府参考人

お答え申し上げます。

 幼稚園就学子女に係る子女教育手当に関しましては、これは、まず一人当たり定額八千円ということになっていまして、それに加えて加算をするということになっていますが、この加算の上限額に関しましては、在外職員子女の幼稚園就学経費の平均額から日本国内の公務員の教育支出に相当する自己負担額、現在では二万二千円となっております、これを差し引いて設定しているところでございまして、このように算定したこれまでの加算限度額は四万三千円ということだったのでございますけれども、今回調査を行ったところ、この経費の平均額が約七万三千円ということでしたので、自己負担額二万二千円を差し引いて、今回五万一千円を加算の上限額としたところでございます。

 今後につきましても、子女教育手当の在り方、不断に検討していくところでございますけれども、現在までのやり方を踏襲するとすれば、平均、在外における職員子女の幼稚園就学経費が上がっていけば、それに基づいて加算限度額の上限を上げるよう財政当局とも交渉していくということになるかと存じます。

羽田次郎

海外で働いている皆さんが家庭の金銭的な事情で不安を感じるようなことがあっては、なかなか仕事にも打ち込めないと思いますし、国民の理解得られる範囲でしっかりとした改定をしていただきたいと思います。

 外交実施体制の強化について、昨年の外交防衛委員会の外務省答弁によれば、中国が大使館を設置している一方で日本が大使館を設置していない国は北朝鮮を除いて二十七か国あり、その内訳は、アフリカが十八か国、中南米が六か国、欧州が二か国、そして大洋州が一か国とされています。
ただ、大洋州のキリバスについては今年一月に大使館が開設されたため、現在は二十八か国になっているという認識です。

 特にアフリカの国々に在外公館が設置されていない傾向がある印象を受けますが、グローバルサウスの重要性が指摘される今、アフリカに在外公館を新設する意義は非常に大きいと考えますが、アフリカにおける在外公館新設をどのように進められていくのか、林外務大臣に伺います。

林芳正 国務大臣

大使館や総領事館などの在外公館、これは海外で国を代表してプレゼンスを示し、外交関係の処理に携わるとともに、外交の最前線での情報収集、また戦略的な対外発信、さらには邦人保護等の分野で重要な役割を果たしているわけでございます。

 二〇五〇年に世界の人口の四分の一を占めると、こういうふうに言われているアフリカ、ここはやはり、若く、希望にあふれて、ダイナミックな成長が期待できる大陸であると考えております。国際社会における意思決定や、また世論の形成においてアフリカが果たす役割、一層重要になってきております。
こうした観点からも、アフリカにおいて、これまで在外公館数の増加など体制の強化に努めてきております。

 二〇一七年一月に在モーリシャス大使館、二〇一八年一月にAU代表部を新設しております。また、三月二十八日、令和五年度予算が成立をいたしまして、在セーシェル兼勤駐在官事務所の大使館への格上げもお認めいただいたところでございまして、引き続き、アフリカ地域も含めて在外公館の整備、努めてまいりたいと思っております。

羽田次郎

本当に、TICAD等も通じてアフリカに対しては様々支援等も行っていると思いますが、やはり中国のプレゼンスというのもかなりアフリカで感じられると思いますので、しっかりとした今後も対応をお願いしたいと思います。

 我が国が力強い外交を展開する裏付けとして、一定の防衛力を整備する必要性というのは理解いたしますが、国家安全保障戦略にもあるとおり、北朝鮮はかつてない頻度で、変則軌道で飛翔するミサイルを含む新たな態様でのミサイル発射を繰り返しています。
こうした日本周辺のミサイルを始めとする経空脅威に対して、政府は、防衛面では反撃能力の保有で対処するとの方針を示しておりますが、外交面ではどのような方針で挑まれるのか、臨まれるのか、また、安保理非常任理事国としてこれまでと違ったアプローチというのも考えられているのか、林外務大臣に伺います。

林芳正 国務大臣

我が国は周辺に強大な軍事力が集中をしておりまして、また、北朝鮮の核・ミサイル開発、そして中国の透明性を欠いた軍事力の急速な強化など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面していると考えております。

 こうした中、まず優先されるべきは積極的な外交の展開でございます。
同時に、外交には裏付けとなる防衛力が必要であります。新たな国家安全保障戦略で、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるのかとの観点から、防衛力の抜本的強化を具体化したところでございます。

 その上で、安保理の理事国として、私自身、二月にニューヨークに出張した際にも、同じく安保理の理事国を務めるガーナ、それからマルタ、こういったところを含めて各国との個別会談を行いまして、北朝鮮への対応を含む地域・国際情勢、また国際社会の共通の課題について率直な意見交換を行って連携を確認をしたところでございます。

 引き続き、米国を始めとする他の理事国とやはり緊密に意思疎通を行いながら、安保理がこの国際の平和及び安全の維持という、この本来の責任、これを果たせるように尽力をしてまいりたいと考えております。

羽田次郎

ありがとうございます。

 先ほど松川委員からもお話少しありましたが、今週末、訪中が予定されているとの報道に私も接しておりますが、外務大臣の訪中が三年余りなされなかった理由はなぜなのか。

 また、林大臣、中国の秦剛外交部長と初の外相電話会談というのを二月二日に行っていると思うんですが、日中の重要な共通認識である建設的かつ安定的な関係の構築実現に向け連携していくことへの意欲を示されておりました。

 二月十八日のミュンヘン安全保障会議でも、王毅政治局員と会談した際も同じように建設的かつ安定的な関係の構築ということを確認されておりますが、日中平和友好条約締結四十五周年でもある今年、条約第一条に明記されている、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させ、全ての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認することがかつてないほど重要になっていると考えます。

 尖閣諸島をめぐる問題ですとか、東シナ海、南シナ海情勢、そして新疆ウイグル自治区における人権問題、そして今現在も数多くの邦人が拘束されている事案等様々な懸案を踏まえた上で、建設的かつ安定的な関係をどのように構築していくのか、訪中の抱負も含めて大臣の御見解を伺います。

林芳正 国務大臣

この日本と中国の間には、様々な可能性とともに、今、羽田委員からもございましたように、尖閣諸島をめぐる情勢を含む東シナ海、南シナ海における一方的なこの現状変更の試みを始め、数多くの課題や懸案が存在しておるわけでございます。
また、新疆ウイグル自治区の人権状況、香港情勢についても深刻に懸念をしております。

 こうした課題や懸案について、主張すべきは主張していくとともに、課題や懸案があるからこそやはり率直な対話、これを重ねていくということが重要であると考えます。

 日中間で昨年十一月に日中首脳会談行われまして、首脳レベルを含めてあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくということで一致をしております。今御紹介いただいたように、二月二日には私も秦剛外交部長との電話会談、二月十八日に王毅外事工作委員会弁公室主任との会談、それぞれ行って、まさに多くの課題や懸案があるからこそ対話が必要であるという旨を改めて述べまして、それぞれ各分野の対話、これを着実に進めていくということで一致をしたところでございます。

 今後とも、日中首脳会談で得られた前向きなモーメンタムを維持しながら、建設的かつ安定的な関係、これを日中双方の努力で構築してまいりたいと考えております。

 新型コロナの影響などもあって、外務大臣の訪中、二〇一九年十二月以来ということでございますが、私の訪中について秦剛部長、王毅主任から改めて招待があったところでございまして、引き続き様々な状況を踏まえつつ具体的な時期を調整していきたいと考えております。

羽田次郎

本当、先ほどの邦人拘束問題も含めて、しっかりとした議論と、そして前向きな議論もしていただければと思います。

 林大臣、三月三日にインドのニューデリーでクアッド外相会合に出席されました。
日本はインド太平洋という地域で多くの国際的な枠組みに関与しています。APECとかASEANプラス3とか様々ありますが、それぞれが役割を持って、これらが重層的に存在することで地域の平和と安定を保っているのだとは思います。

 ただ、クアッドの取組というのは注目されていますが、四か国の異なる立場も見え隠れしていると思います。
今回のクアッドの外相会合で発出された共同声明では、肝腎のロシアへの言及はありませんでした。
核兵器に関しても、インドはそもそも核兵器不拡散条約の枠外ですし、オーストラリアは我が国と同様、米国の核の傘の下にありますが、我が国と異なって核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加しております。
経済に関して言えば、アメリカはTPPから離脱して、インドはRCEPから離脱するなど、ここでも一致した行動を取ることができていないと。

 そういう中で、基本的価値の共有、法の支配の考え方からも、クアッドは日本の取り組むべき課題を見えにくくしているんじゃないかという見方もありますが、林大臣のお考えをお聞かせください。

林芳正 国務大臣

我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中で、この法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化する、この重要性がより一層高まっておるわけでございます。

 こうした状況下において、各国の有する歴史、背景となる事情、これはそれぞれ異なっておりまして、必ずしも今委員がおっしゃったように、あらゆる課題について、この日米豪印の四か国の立場が一致しているというわけではないわけでありますが、そうした立場の違いを乗り越えて、この自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンの下で、四か国の間で様々な協力をしっかり進めていくということ、そこに大きな意義があると考えております。

 この三月三日にニューデリーで日米豪印外相会合開催されましたが、四か国の外相間で率直な意見交換を行うことができました。
法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が脅かされている中で、日米豪印として一方的な現状変更への反対といった重要な原則、またルールに基づく国際秩序、これは主権、領土一体性、透明性、紛争の平和的解決、これを尊重すべきこと、そして自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた力強いコミットメント、こういうことを確認することができ、大変有益であったと考えております。

 今後とも、この自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、日米豪印として幅広い分野で実践的な協力を進めてまいりたいと考えております。

羽田次郎

今大臣からも言及があったこの自由で開かれたインド太平洋に関して、先日、岸田総理がインド世界問題評議会で、自由で開かれたインド太平洋のための日本の新たなプランというものを発表されました。
内容について評価できるとは思うんですが、ただ、国際社会を分断と対立でなく協調に導くという目的、目標ですとか、力と威圧とは無縁、誰も排除しない、陣営づくりをしない、価値観を押し付けないというような内容なんですが、実際の外交や防衛の方針等を聞いておりますと、新たなプランの中ですら矛盾とも思える記述があるというふうに私には読み取れるんですが、私の理解が足りないのかもしれませんが、矛盾がないということであれば是非御説明をいただければと思います。

林芳正 国務大臣

今般総理が発表いたしました自由で開かれたインド太平洋のための新たなプランでございますが、国際社会を分断と対立ではなく協調に導くとの目標に向けて、歴史的転換期におけるこのFOIPの考え方、取組について具体的に示したものでございます。
その中で、自由と法の支配の擁護、多様性、包摂性、開放性の尊重といった、こうしたこのFOIPの中核的な理念を維持をいたしまして、変わらない点、これを明確にしたところでございます。

 日本は、従来からFOIPの考え方に賛同してもらえるのであれば、いかなる国・地域とも協力していくという姿勢で取り組んできておりまして、その点について何ら変わりはないわけでございます。

 引き続き、米国、豪州、インド、ASEAN諸国、太平洋島嶼国、韓国、カナダ、欧州など、多くの国々との連携を強化しながらFOIPの実現に向けてしっかり取り組んでいきたいと考えております。

羽田次郎

どうしても陣営づくりをしないとか価値観を押し付けないという部分とは矛盾するんじゃないかなという気はしてしまうんですが、次の最後の質問に移りたいと思います。

 四月十六日から十八日の日程で行われる予定のG7長野県軽井沢外相会合について、最終日の十八日に軽井沢の町議選が告示されるんですが、交通規制等で選挙活動に支障がないかという懸念が地元の町議選の候補予定者からも寄せられました。
警察庁からの御説明で、交通規制がしかれる区域でも選挙活動は妨げられないというお話いただきましたので、各陣営にもしっかりと説明がなされていると思います。

 ただ、閑静な避暑地として名高い軽井沢町が、遊説や街頭演説で騒がしいと各国外相に悪い印象を与えてしまわないかという心配もあります。
なので、各国に対して、G7会合最終日に地元自治体で選挙が始まるため多少騒がしくなるけど、あくまでも選挙期間だけであるという説明を外務省からしていただけるのかどうか、伺います。

北川克郎 政府参考人

お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、G7長野県軽井沢外相会合を安全かつ円滑に開催するための万全な実施体制を確保すべく、警察等の関係機関及び長野県、軽井沢町といった開催地の自治体と連携して準備に取り組んでおります。

 参加するG7各国との間では平素から会合に関する連絡、情報共有に努めておりますが、外相会合最終日が軽井沢町町議会議員一般選挙の告示日に当たり、関連する選挙活動が開始する点についてもG7各国にしかるべく周知してまいりたいと思っております。

羽田次郎

時間となりますので、大臣の抱負はまた別の機会に伺いたいと思いますが、建設的かつ未来志向の、また多様性に富んだ前向きな議論をしていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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