アフガニスタン

羽田次郎は今日の外交防衛委員会で質問に立ちました。

今日のテーマはアフガニスタン。

きっかけは、米軍撤退後アフガニスタンを制圧したタリバンに命を狙われている家族を持つ少数民族ハザラ族の切実な声です。

世界にはロシアに侵攻されたウクライナ以外にも、迫害を受ける恐れのある人々はいます。

彼らの人の命にどう向き合うのか、ウクライナからの避難民を積極的に受け入れるのは日本政府としては評価すべきことです。

でも、今だけ国際社会にいい顔をしても、極端に低い難民認定率などの課題はそのままです。

世界の片隅に生きる一番弱い立場の方々にどのように寄り添っていくのか、そんな問題意識をぶつけました。

羽田次郎

立憲民主・社民の羽田次郎です。

 今やはりウクライナ情勢が緊迫しておりますので、どうしてもウクライナ問題中心の議論となっておりますが、今日はあえてアフガニスタンをめぐる問題について質問させていただきたいと思います。

 昨年八月末、同時多発テロから二十年となる日を目前にして米軍がアフガニスタンから撤退し、タリバンが再び権力を掌握しました。米兵を含む多国籍軍で数千人、民間人を含むアフガニスタン人は十数万人とも言われる途方もない犠牲者を出したアフガニスタン紛争、国際社会が支援した政権は、迷走の末、ガニ大統領が国外へ逃れたことで事実上崩壊しました。

 そこで、林大臣に質問です。

 日本政府として、対テロ戦争以降の米国のアフガニスタン政策、そして米国の駐留と撤退をどのように評価しているのでしょうか。

林芳正 国務大臣

二〇二一年の八月末に、バイデン大統領は、二十年間にわたるアフガニスタンでの駐留が終了した旨の声明を発表いたしました。
日本政府としては、米国のかかる決定を理解し尊重するとともに、この間、米国がアフガニスタンにおいて、テロ対策、民生の向上、和平に向けた努力など、様々な取組を行ってきたことに関し、日本政府としてこれを評価をしております。

 アフガニスタンの安定、これは国際社会の平和と安定にとって引き続き極めて重要であると、こう認識しておりまして、日本政府としても、過去二十年間の支援の成果、これを維持しながら、今後とも、アフガニスタンの平和と安定に向けて、米国を含む国際社会と緊密に連携しつつ取り組んでまいりたいと考えております。

羽田次郎

御答弁ありがとうございます。

 和平交渉が進展せず、将来の見通しが立たないままの撤退について、バイデン大統領は、他国の再建のために大規模な軍事作戦を行う時代は終わった、撤退が最良の選択だったと御説明されています。
今後、米国の政府機関、学界、メディア等で詳細な分析がなされると思いますが、米国史上最長の戦争は日本にとっても他人事ではありませんでした。

 我が国が旧テロ対策措置法に基づき行った給油などの支援内容及び人道支援として行った取組内容、そしてそれらの総額についてお答えいただければと思います。

北村俊博 政府参考人

お答えいたします。

 日本は、二〇〇一年以降、アフガニスタンに対しまして、同国の持続的、自立的発展のため、人道、保健、教育、農業、農村開発、治安維持向上のため、あるいは女性の地位向上など、様々な分野での支援を実施してきました。

 二〇二一年八月以降のアフガニスタンの危機的な人道状況を踏まえて実施を決定しました人道支援を含めますと、これまでの支援総額は約七十一・三四億ドル、日本円で約七千二百三十八億円となっております。

 これに加えまして、委員御指摘のとおり、NATO傘下の地方復興チームに対する文民支援チームの派遣や、テロとの闘いの一環として、インド洋における補給支援活動等も実施した実績がございます。

羽田次郎

ありがとうございます。

 米国主導で、二十年間、日本を含む国際社会が一体となってアフガニスタンの立て直しに取り組み、支援を続けてきたことが水泡に帰すような結果となり、残念でなりません。

 今再び、より深刻な危機に陥っているアフガニスタンに対し、今年一月、国連は、五十億ドル以上の支援金が年内にも必要だとして、国際社会に拠出を求めております。
日本政府として現在も国際機関やNGOを通じて食糧支援等様々な支援をされていると思いますが、まだまだ足りない上、必要とされている方々に食料等がきちんと届いていないと報じられています。

 また、先日、NHKの番組でも、銃撃で亡くなられた中村哲医師がかつて現地代表をされていたペシャワール会が、農地のためのかんがい用水路を造るために必要な重機のレンタル料金や支援物資購入のためにアフガニスタンに送金しようとしているが、送金もできないという問題に触れていました。経済制裁下でありますが、認められた人道支援団体であれば米国も送金を許可しているそうですが、政情が不安定という理由で日本の銀行は許可してくれないというお話でした。

 政府として、現在、飢餓状態にあるアフガニスタン国民に対してどのような人道的支援をしているのでしょうか。
その支援は必要な方々に届いているのでしょうか。
あわせて、送金に関して何か政府として支援ができないのか、お分かりになる範囲内でお答えください。

北村俊博 政府参考人

お答えいたします。

 我が国は、先ほどと重なりますけれども、アフガニスタンの人道危機への対応としまして、昨年十月に約七十一億円規模の国際機関経由での緊急人道支援を決定しております。
また、令和三年度補正予算によりまして、アフガニスタン及び周辺国に対しまして、同じく国際機関経由で約百十八億円規模の追加的な支援を今現在実施しているところでございます。

 それぞれの拠出先の国際機関からの報告によりますと、現下のアフガニスタンにおきましても、各国際機関、独立、中立的な立場から、食糧支援や医療支援など、アフガニスタンの人々の人道状況の改善に直結する仕事を着実に実施しているというふうに報告を受けております。
例えば、食料につきましては、アフガニスタン国内あるいは近隣諸国で調達をしてアフガニスタンの人々に届けるというような形で、国際機関側も効率的な支援の実施に努めているというふうに承知しております。

 あと、委員御指摘の送金の件でございますけれども、これは去年の十二月に国連安保理決議が採択されておりまして、その中におきまして、アフガニスタンにおけます人道支援あるいは基本的人道ニーズに係る支援活動につきましてはタリバン関係者等への制裁決議には違反しないという形で定められておりますので、御指摘も踏まえまして再度確認をさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、引き続き、国際社会と連携しつつ、アフガニスタンの人々に寄り添った支援を実施してまいりたいと思っております。

羽田次郎

やはり、アフガニスタン、様々な部族がいるということで、また、その部族の長と関係が深い方たちにどうしても、御家族とか親族とか、そういったところに支援が行き届くけど、なかなかそうじゃない方々、特に弱者に届かないというような状況がやはりあると思いますので、そうした現地のNGO等としっかりと連携して、本当に必要とされている方たちに届くような支援を是非していただきたいと思います。

 昨日の政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会でも、林大臣が、魚を与えるのではなく魚を捕る方法を教えることが大事だというお話を引用されていましたが、まさにそのとおりだと私も考えます。
支援に頼らず、自立することを誇り高いアフガニスタンの方々も望んでおられますが、自立のためのサポートをするのが今、日本に求められていることだと考えております。

 ところで、現在、在アフガニスタン日本大使館の状況はどのようになっているのでしょうか。今も大使館としての機能は続いているのでしょうか。

長岡寛介 政府参考人

お答えいたします。

 在アフガニスタン日本大使館は、昨年九月以降、カタールに臨時事務所を置きまして業務を継続しております。
岡田駐アフガニスタン大使は、これまでカブールへの出張などを通じて、現地情勢の情報収集、それから、邦人、現地職員等の安全確保を始めとする我々として関心を持っている様々な事項につきまして、タリバーンに対して直接の働きかけを行っているところでございます。

羽田次郎

本当に限られた情報量の中で、岡田大使を始めとして現地スタッフの皆さんが奮闘されていることには本当に敬意を表します。

 今回、タリバンとも直接お話を大使がされたというふうに報道もされていましたが、もしその内容についてお話をいただければと思います。

長岡寛介 政府参考人

お答えします。

 先ほど委員から御指摘ありましたように、岡田大使はカブールへの出張の際にタリバーンの幹部とも意見交換をしております。
その際には、私どもから、日本だけではなくて国際社会が強い関心を持っている事項、例えば女性や少数民族を含めたアフガニスタンの人々に対するその人権をきっちり尊重するように、あるいはアフガニスタンの全ての人が包摂的に政府等の中に入れるような、そういう政治体制の構築、それから、先ほど申したように、日本人あるいは私どもの大使館の現地職員、その他日本にゆかりのある人たちの安全の確保、ないしは希望する人の安全な出国、そういったことを繰り返し求めてきておると、そういう状況でございます。

羽田次郎

ありがとうございます。

 翻って、在日本国アフガニスタン大使館はどのような状況にあるのか。
そして、現在、タリバン臨時政府を日本として承認していないと思うんですが、日本が承認していたガニ政権は既に崩壊している、そんな状況で、大使館についての現状の御認識と御対応について教えてください。

長岡寛介 政府参考人

日本にございますアフガニスタン大使館について、そのステータスに関して、現在までアフガニスタン側から特段の連絡は受けておりません。
したがいまして、駐日アフガニスタン大使館の現在でのステータスというものは変更はないというふうに考えております。

羽田次郎

ありがとうございます。

 今も多分その大使館の大使含めスタッフの方と連絡を取り合っているのだと思いますが、関係者の方のお話を先日伺ったところ、臨時政府からの送金もなく、資金が枯渇していて、大使館スタッフは次々に退職して、公共料金の支払さえ困る状況というふうに聞きました。
非常に心配しております。

 大使館として接遇している以上、困窮しているのであれば何らかの支援をすべきと考えますが、そもそもそういうことが可能なのでしょうか。

林芳正 国務大臣

現在も駐日アフガニスタン大使館とは必要なコミュニケーションを取ってきておりますが、委員御承知のとおり、アフガニスタン情勢、依然として大変流動的でございまして、今後のことに関して予断をするということが困難な状況にございます。

 日本政府として、この今の駐日アフガニスタン大使館に対する具体的な支援の検討というのは行っておらないところでございます。

羽田次郎

なかなか政府として何もできないというのは、大臣もきっともどかしい思いでいらっしゃるんだと思いますが、それこそアフガニスタンで日本に避難された方たちがお金を募って何とかそういった支払に充てようなんという動きもあると聞いておりますが、何か本当に日本としてもしてあげられることがないのかというふうに考えてしまいます。

 今、迫害を恐れてイランやパキスタンなど隣国に逃れているアフガニスタン避難民が大勢いらっしゃいます。
ウクライナ避難民に対して行われているように、隣国へ逃れた避難民に対して、短期間で渡航証明書を発行し、日本へのフライトの座席を確保するような支援を政府としては行っているのでしょうか、若しくはそうした御検討はされているのでしょうか。

長岡寛介 政府参考人

昨年夏にアフガニスタンの情勢が悪化した後、政府としては様々な外交努力を継続し、現在までに日本の支援を受けて六百名以上の日本関係のアフガニスタン人が日本に入国をしている状況でございます。

 こうした日本関係のアフガニスタン人のアフガニスタンからの出国、ないしは日本への渡航につきましては、個別の事情を踏まえて必要に応じた支援を行ってきてはいるところでございまして、例えば近隣のイラン、パキスタン、そういった在外公館も含めて、退避に関する要望とか照会が寄せられた場合には、それぞれの事情に応じてできる限りのことを政府全体としてきめ細やかに対応しているというところでございます。

 具体的には、それぞれの事情が違いますので一義的に申し上げることは難しいんですけれども、例えばオミクロン株が流行しまして水際対策が非常に厳しい状況のときに、外国人の入国というのはかなり一律難しい状況ございましたけれども、そういった制限があった場合でも、アフガニスタンから日本に逃れてきたいという方については特段の事情ということで入国を認めるよう政府全体として対応したということがございます。

羽田次郎

今のお話を聞いて少し安心しましたが、どうしてもウクライナに対する支援というのが急激に大きく政府としても行っているので、アフガニスタンとかミャンマーとか、先日質問させていただいた北朝鮮に残されている人々、そうした人々に対してもウクライナと同じような支援を行わないと、逆に日本は差別的だなんというふうに言われかねないので、是非引き続き変わらぬ支援をいただけたらと思います。

 そうした思いも踏まえてお聞きしますが、現在、日本で難民認定を受ける要件と受入れ状況、簡単に御説明いただければと思います。

丸山秀治 政府参考人

お答え申し上げます。

 入管法第二条第三号二におきまして、難民とは難民の地位に関する条約第一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうとされております。
一般論として申し上げれば、我が国で難民認定申請がなされた場合には、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、条約の定義に基づき難民と認定すべき者を適切に認定することとなります。
もっとも、難民とは認められない方であっても、本国情勢等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる方には、入管法の規定に基づき、我が国に在留を認めているところでございます。

 お尋ねの認定状況でございますが、令和二年の数字で恐縮でございますが、令和二年に難民と認定した者の数は四十七人でございます。
そのうち、アフガニスタン国籍の方は五人となっております。

羽田次郎

ありがとうございます。

 同じ時期のデータですが、ドイツでは四一・七%の難民認定率で六万三千四百五十六人、そしてアメリカでは二五・七%で一万八千百七十七人。
日本の四十七人というのは僅か〇・五%という難民認定率となっていて、日本のこの認定が低いこと、これは、逃れてきた政府から個人として把握され、個別に標的とされていない人は難民に当たらないとする個別把握論が取られているからだと言われています。
ただ、UNHCRは二〇一六年に、戦争、武力紛争であっても条約上の難民に該当すると明記したガイドラインを出しております。

 幾つか質問ありますけど、ちょっと時間となりそうなので、こうした今ウクライナ情勢の中で、今こそ国際的スタンダードの人道支援、苦しい状況に置かれた方々に寄り添う対応に変えるチャンスだと思いますので、是非、林大臣のリーダーシップで新たな局面に一歩踏み出されることをお願い申し上げ、私の質問とさせていただきます。

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