決算委員会

羽田次郎は、今日は決算委員会で質問。

雇用調整助成金や、水道関連施設の維持・管理と予算の執行状況、さらに裁判員制度について質問しました。

国会で後藤茂之厚生大臣に質問することは羽田次郎にとっては感慨深いことでした。
今は亡き兄の羽田雄一郎が最初に参議院選挙に立候補した時、「太っている人間に悪い人間はいない!」と温かいエールを送ってくださったのは、当時は民主党所属だった後藤茂之衆議院議員でした。国土交通大臣だった羽田雄一郎に続く長野県選出の後藤大臣。
是非頑張って欲しいものです。

羽田次郎は以前、裁判員を務めた経験があります。
国会議員は選ばれる対象ではなく、また選ばれるのは15,200人にひとりという極めて低い割合ですので本当に貴重な経験でした。
一方で棄権する人も非常に多いのは残念です。
来年4月の改正少年法施行に伴い、再来年からは高校生も裁判員に選ばれる可能性があります。
死刑判決を含む他人の人生を左右することは大きな責任ですし、社会経験のない自分たちにそんな役が務まるのかと悩む人も多いと思います。
しかし、多様な意見を取り入れる質の高い裁判を実現する機会として積極的に参加してもらいたいと考えています。

引き続き、国には積極的な周知と法教育の充実を求めていきます。

羽田次郎

立憲民主・社民の羽田次郎です。

 二〇二〇年十二月二十七日に新型コロナウイルス感染症で命を落とした兄、雄一郎の議席に対する補欠選挙で、一年前の今日、四月二十五日に私が議席を得ることができました。
その兄も、一九九九年、村沢牧参議院議員の御逝去に伴う補欠選挙で初当選しています。
その際、私は長野四区を担当しておりましたので、兄の初当選に向けた選挙戦で、当時、同じ党に所属していた後藤大臣とともに兄の応援弁士を務めさせていただきました。
その際、太った人に悪い人はいない、兄と同じようにがっしりした体格をされていた後藤大臣が力強く演説されていたことが非常に印象に残っています。

 二十年以上の時を経ていろいろと思うところはございますが、兄が国土交通大臣を務めさせていただいて以来の長野県選出の閣僚ということだそうですので、信州人の一人として頑張っていただきたい、素直にそう考えております。

 体格とは関係なく、世の中には善い人も悪い人もいますが、新型コロナウイルス感染症に苦しむ企業や労働者から事業と雇用を支えてくれたと高く評価された雇用調整助成金を悪用する人もいました。あってはならないことです。

 そうした不正とは別ですが、厚生労働省は、雇用調整助成金の支給を迅速に行うため、支給申請に係るハローワークシステムへの情報入力について入力項目を省略して行っていました。
一方で、多額の財政支出を伴って実施した雇調金等の在り方について検討を行うためにはこれまで入力を省略されていた項目も含めてシステムに入力する必要があるとして、これらの項目の遡及登録を可能とするため、令和三年三月に九千八百九十四万円を掛けてシステム改修を実施しています。
しかし、会計検査院による検査の時点では申請の対応に追われており、遡及登録を開始する時期の見通しも立たないということでした。

 遡及登録をしなければならないデータは膨大です。
作業の費用や期間等を考えますとしっかり計画を立てて実施せねばならないと考えますが、作業実施の見通しと、整備したシステムが活用されていないことに対する御見解を伺います。

奈尾基弘 政府参考人

お答え申し上げます。

 雇用調整助成金でございますが、コロナ禍において特例による手厚い措置で雇用を支えてきたところでございますけれども、大量の申請を迅速に処理できるよう、システムのデータ入力項目も極力減らして労働局職員のデータ入力の簡素化を行ってきたところでございます。

 こうした状況の中で、昨年十一月に会計検査院からは、雇用調整助成金等の支給申請に係る詳細な情報を事後にハローワークシステムに遡及登録する場合には適切に計画を立案して実施することといった指摘を受けたところでございます。

 この会計検査院の指摘も踏まえまして、支給申請に係る詳細な情報については、遡及登録に係る作業を本省で一括して進めてございます。
本年三月時点で約三十万件をハローワークシステムに遡及登録済みでございまして、引き続き対応を進めてまいりたいと考えてございます。

羽田次郎

しっかりと遡及登録も行い始めているということで、少し安心いたしました。

 今お答えいただいた改修されたシステムについてもそうですが、休業手当の支払額を上回る金額を事業主へ支給してしまった弊害、そして申請書類の偽造等による不正支給や郵送とオンラインの両方を用いた同一の申請に対する二重支給の発生、そして同一人物が副業と見せかけて複数の会社に休業対象となっている事案等、会計検査院の指摘に対する御見解を後藤大臣に伺います。

後藤茂之 国務大臣

雇用調整助成金等につきましては、コロナ禍において迅速に支給決定できるように申請手続の簡素化にも取り組んでまいりましたが、それにより書類審査において不正申請が見付けにくくなるという側面もあったというふうに思います。 

 こうした状況の中、昨年十一月に会計検査院からは、架空雇用など事実と異なる不正受給案件、支給額が実際の休業手当額を上回るケース、同一期間に同一の労働者が行った休業等に対して重複して支給していたケース、迅速支給等のために入力を省略していたデータについて遡及登録を行う際の適切な計画立案などについても指摘を受けたことから、改善の取組を進めているところでございます。

 まず、迅速支給の一方で不正受給対策強化も図っておりまして、具体的には、各都道府県労働局に対しまして、不正が疑われる事業主への積極的な調査実施、不正受給に対応するチームの編成、労働局間での不正手口等の共有、警察等関係機関との連携を指示して対策強化を進めているところでございます。

 次に、支給額が実際の休業手当額を上回る事案については、昨年九月より、実態に即した助成額となるよう算定方法の見直しも行ったところでございます。

 また、重複して支給していた事案については、同一の事業主に誤って二重に支給することがないように、支給履歴の確認の徹底を図ったところでございます。

 さらに、入力を省略していたデータの遡及登録については、本年三月時点で約三十万件登録済みでありまして、徐々にではありますけれども、取組を進めているところです。

 引き続き、真に制度を必要とする事業主に御利用いただけるように、不正受給対策等に的確に取り組んでいきたいと思います。

羽田次郎

ありがとうございます。

 対策強化、そして実態に即した支給ということ、しっかりと進めていきたいと思います。

 次に、水道施設の維持管理と予算の執行状況について伺います。

 水道は、言うまでもなく市民生活や経済活動に不可欠かつ重要なライフラインでありますが、給水人口の減少による経営環境の悪化や施設の老朽化への対応が課題となっております。

 令和三年十月の和歌山市における水管橋の一部崩壊は、橋と水道管をつなぐ部材の経年劣化が原因と見られ、広範囲で断水が発生する事態となりました。また、今年三月の地震でも、岩手、宮城、福島の計七万戸で断水が発生しております。
耐震化されていない水道管では漏水が相次ぎ、断水の長期化を招いたとも指摘されています。

 厚生労働省は、このような水道施設の老朽化等に起因する事故や断水が頻発する現状をどのように認識し、どのような対策を講じているのでしょうか。

後藤茂之 国務大臣

高度経済成長期に多く整備されました水道施設の老朽化は非常に重要な課題であると認識しております。
例えば、全国的に発生している水道管の漏水、破損事故等についても老朽化が主な要因の一つであると考えております。

 そのため、水道の老朽化対策及び耐震化といった観点から、平成三十年の改正水道法において、水道事業者等に対して長期的観点に立った水道施設の計画的な更新を行うことや、水道施設の更新に関する費用も含む水道事業の収支の見通しの作成、公表について新たに努力義務が設けられておりまして、これを踏まえて水道の適切な資産管理を推進しているところであります。

 また、令和二年十二月に閣議決定されました防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策に基づきまして、上水道管路の耐震化対策について目標を定めて強力に推進をしております。これらの対策を前進させるために、水道施設への国庫補助や水道の耐震化計画等策定指針の作成、周知等を行っておりまして、こうした水道事業者等への財政的、技術的支援を通じて着実に水道施設の更新を進めてまいります。

羽田次郎

しっかりした御答弁をありがとうございます。

 ただ、例えば耐震化率については、令和元年度は四〇・九%で令和二年度は四〇・七%と〇・二ポイント減少しており、依然として低い状況が数字にも表れています。
一方で、令和二年度水道施設等整備費の執行状況は、前年度から繰越額六百四十二億円を含む予算現額千五百四十億円に対し決算額は五百三億円で、執行率は三二・七%にとどまっています。前年度繰越額分も消化できていないというのが現状です。
不用額も二百四十七億円発生しています。  老朽化対策がなかなか進まない原因と、確保されている予算の執行が低迷している理由を併せて改めてお答えください。

武井貞治 政府参考人

お答え申し上げます。

 水道施設の耐震化、老朽化対策については、水道事業者において、厚生労働省による財政的、技術的支援等を活用しながら推進していただいているところです。

 一方、水道事業者の主な財源である水道料金収入の元となる水道水の供給量は、人口減少の進行等により減少傾向にあります。
また、水道事業に携わる職員数はピークと比べて四割程度減少しており、特に規模の小さな水道事業者においては数名の職員で事業を行っています。

 水道事業者におかれてはこのような厳しい環境下で水道施設の耐震化、老朽化対策に取り組んでいただいていると承知しており、厚生労働省としても、広域連携や官民連携の推進等の水道基盤強化に係る施策を通じて水道事業者をしっかり支援してまいります。

 あわせまして、執行率についての御質問をいただきました。

 水道施設の耐震化等の整備については、水道料金による実施を原則としつつ、経営状況が厳しい水道事業者が行う事業などを対象に、その整備に要する費用を財政支援しているところです。
さらに、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策により、水道施設の耐震化を集中的に推進しております。
また、水道事業の広域連携は基盤強化を図るために有効な方策であり、広域化に伴う水道施設の整備に要する費用についても財政支援をしているところです。

 水道の整備に係る予算については、地方自治体の要望等を踏まえ必要と見込まれる予算を計上していますが、地方自治体の厳しい財政状況、入札不調や職員数減少など厳しい事業環境等のために必ずしも計画どおりに執行できていなかった事例もあると承知しております。
そのため、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策により、水道施設の災害対策や水道管の耐震化対策などニーズが高い対策を支援の対象に追加するなど、支援の充実に取り組んでおります。

 引き続き、必要な予算の確保、地方自治体に対する技術的支援、広域連携や官民連携の推進により、地方自治体が必要とする水道施設の耐震化、老朽化対策が着実に実施されるように取り組んでまいります。

羽田次郎

繰越額分も使われていないような状況ですので、そのしっかりした支援強化するというお言葉は理解できるんですが、なぜこんなに執行されていないのかというのは、まあこれから五か年計画で加速化されるということですので、是非必要な部分には必要な予算をしっかりと使っていただく、ただ、予算を使うことだけを加速化することはないようにお願いしたいと思います。

 コロナ対策について立憲民主党はこれまで数々の政策をお示ししてきましたが、感染予防策として最も大切な手洗い、うがいをするための安全な水道水の供給維持についてお聞きします。

 オミクロン株の流行で、浄水場や水道事業体の業務体制も危機的な状況になりかねないとの現場の声を聞いています。
実際に、鹿児島県薩摩川内市では、クラスターの発生で水道職員が一人も出勤できない事態が起こりました。

 感染予防の要である水道事業の維持のための国の支援状況を教えてください。

後藤茂之 国務大臣

水道は、国民生活や社会経済活動の根本を支える必要不可欠な社会基盤であるというふうに思っています。  新型コロナということもあります。
また、人口減少に伴う給水量の減少の問題だとか水道施設の老朽化、災害の激甚化、頻発化、深刻化する人材不足等の課題に水道事業も、これも例外なく直面をいたしております。

 このため、厚生労働省としては、しっかりと水道事業者に対する財政的、技術的な支援を行うことも含めて、重要なライフラインである水道の安全で安定した供給の維持に向けて今後とも水道の基盤強化にしっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。

羽田次郎

浄水場の運転や水道技術を専門的に担う職員は限られております。
世界で水道水が安心してそのまま飲める国は九か国しかないとも言われる中で、二十四時間三百六十五日、安心、安全な水をつくり国民へ届け続けるためにも、しっかりとした国の支援が必要と考えます。

 宮城県では、この四月から、水道、下水道、工業用水道のコンセッション事業が始まりました。
水道事業運営を一括して民間に委託するのは全国でも初めてのことだそうですが、二十年間の委託期間で総事業費が三百三十七億円削減されるという見込みと聞いております。
経費削減は歓迎される部分もあると思いますが、国、自治体の関与が狭まると、料金が上昇したり水質が低下したり断水時の復旧責任の不透明化が生じたり、先ほどの和歌山市での事故のようなことが再び起こった場合の対応について懸念されるところがあります。

 以上を踏まえた上で、今後全国展開が見込まれる水道のコンセッション事業の方針や課題への対策についてお答えください。

武井貞治 政府参考人

お答え申し上げます。

 水道分野におけるコンセッション方式については、平成三十年の水道法改正において、事業の確実かつ安定的な運営の観点から、最終的な給水責任は従来どおり自治体が負うとともに、あらかじめ厚生労働大臣の許可を受けるなど、公の関与を強化する改正が行われました。

 コンセッション方式を導入する場合、PFI法に基づき、地方自治体において利用料金に関する事項、運営等の基準、業務範囲等を事前に条例等で定めることとしております。
また、事業開始後は、PFI法に基づき、地方自治体が民間事業者の経営状況や業務内容を定期的にモニタリングする仕組みとなっており、例えば事業運営や水質管理が契約で定めた基準に沿って適切に行われていること等を自治体が確認することとなっています。
さらに、水道法に基づき、事業の開始前に厚生労働大臣が、料金設定の適切性、災害時等の事業継続や地方自治体と民間事業者の役割分担などを確認した上で自治体に許可を与えることとしています。

 本年四月には、委員御指摘のように、宮城県において水道分野で初となるコンセッション事業が開始されたところです。
厚生労働省としても、このような事例を注視していくとともに、地域の実情に応じた官民連携手法の活用を推進してまいります。

羽田次郎

しっかりと連携していただきたい。
そして、民間の御尽力がなければ水道事業が成り立たないのも事実ですので、コンセッション事業について全否定するわけではございません。
ただ、しっかりとした公的な関与により安心、安全な水を全国に届けていただきたいということを強く申し上げたいと思います。

 水質に関しては、昨年来、命に関わる問題が続いています。

 群馬大学附属病院で、空調用水が水道水に混入し、その水道水を使ったミルクを飲んだ乳児十人がメトヘモグロビン血症を発症するという問題が生じました。
幸い乳児の命に別状はありませんでしたが、酸素欠乏症により死に至る危険もありました。
ほかにも、米軍基地での泡消火剤使用が原因で有機フッ素化合物、いわゆるPFASが地下水に混入し、それが水道水に入ったことによる健康被害が懸念されています。

 群馬大学附属病院の問題は、水道についての所管は厚労省ですが、建物の配管に関しては国交省の所管となっています。
地下水の問題、これは地下水の汚染という意味で環境省、水道の問題としては厚労省、それ以前に外務省の問題でもあると言えます。

 水問題に対する省庁間連携は、防災の観点では進んでいるようにも感じますが、水質の問題や水環境の問題についてはなかなかそれが実感できません。
二〇一四年に水循環政策本部が立ち上がりましたが、担当大臣は国土交通大臣が兼務されています。
だからなのか、水量の問題には積極的に取り組まれていても、水質の問題は縦割りが顕著のように感じられます。
こういった省庁をまたぐ水の問題についてお考えをお聞かせください。

三橋さゆり 政府参考人

お答え申し上げます。

 水政策については、上水道、下水道、環境など様々な分野にわたっていることから、施策を総合的に調整することは健全な水循環の維持、回復にとって極めて重要です。
このため、平成二十六年に水循環基本法が制定され、これに基づき、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官及び水循環政策担当大臣を副本部長とし、全閣僚をメンバーとする水循環政策本部が内閣に設置されております。

 この水循環政策本部の総合調整の下、各府省が一体となって、多岐にわたる水循環に関する施策を集中的かつ総合的に推進し、健全な水循環の維持、回復に努めてまいります。

羽田次郎

ありがとうございます。
水の問題は命の問題です。
水源から蛇口までの安心、安全をしっかりと守り抜いていただくことを後藤大臣にお願い申し上げます。

 残りの時間で裁判員裁判制度について質問させていただきます。

 広範な国民の参加によりその良識を裁判に反映させるという裁判員制度の趣旨から、裁判員になることは義務とされています。国民の負担が著しく大きくなることを避けるために法律で辞退事由が定められているので、認められれば裁判員を辞退することもできます。
ただし、裁判員候補者の辞退率は制度開始以降高止まりしている現状に対する御認識と、その原因についてお伺いいたします。

吉崎佳弥 最高裁判所長官代理者

お答え申し上げます。

 裁判員候補者の辞退率につきましては六〇%台で推移しているところでございますが、これは、様々な御事情を抱える国民の皆様の負担について裁判所として配慮して辞退の判断をしているという一面もあると思われますが、委員御指摘のとおり、国民の参加意欲が十分に高まっていないという状況がうかがわれるものでもあると認識してございます。

 最高裁では、辞退率などに関して平成二十九年に外部業者に委託して分析を行わせていただきました。
これによりますれば、審理予定日数の増加、雇用情勢の変化、高齢化の進展、裁判員裁判に対する国民の関心の低下などの事情が辞退率の上昇に寄与している可能性があるとされてございます。

 辞退率の推移につきましては、最高裁としても制度の運用に当たっての重要なテーマであると考えておりまして、今後も引き続き原因の分析も含めまして注視してまいりたいと考えております。

羽田次郎

裁判員を選任される場合、年末頃に最高裁判所から封書が届き、裁判員候補者の名簿に掲載されたことが通知され、後日、住所地の地裁から選任手続期日の出席を求める通知が届きます。
実は私も裁判員に選ばれたことがありますが、名簿に掲載されたことを忘れた頃に地裁から封書が届いたときは、何事かと家族とともに動揺したことが思い出されます。

 地裁からの通知に対し、辞退するか否かまず返答し、辞退等の欠席理由がない場合、選任手続期日に裁判所に出頭します。
そこで初めて担当する事件の内容を説明されましたが、再び辞退するかの確認もされ、電子的にくじで選任された人が最終的に裁判員か予備裁判員になります。
実際に選任手続期日に出席した人の割合、出席率を見ると、令和三年の出席率は七一・五%でした。

 裁判員法の規定では、選任手続期日の出席を求められた候補者が正当な理由なく出頭しないときは十万円以下の過料に処するとされています。
しかし、毎年三〇%前後が無断欠席しているにもかかわらず、制度の運用開始から十年以上たった今も一度も過料が科された事例がないということですが、法律の適用についてどのようにお考えでしょうか。

吉崎佳弥 最高裁判所長官代理者

お答え申し上げます。

 過料に処するか否かの判断につきましては、個々の裁判体が法律にのっとって個別の事案ごとに考えている事項でございまして、事務当局としましてはその当否などにつきましてお答えする立場にはございません。
お答えはその点について差し控えさせていただきます。

 なお、裁判員候補者の無断欠席の問題につきましては、先ほどお答えした外部業者による分析結果も踏まえまして、不在を理由に呼出状が不送達になった場合に再送達を行ったり、事前質問票が期限までに返送されなかった場合に書面で返送依頼を行ったりするなどの運用上の工夫を行うことが無断欠席者を少なくするために一定の効果を有する可能性が高いと考えられておりまして、裁判所各庁においてもそうした運用上の取組を続けているところでございます。

羽田次郎

ありがとうございます。

 令和二年の裁判員裁判に参加した裁判員に対して行った調査では、選任前に余りやりたくなかったと答えた方であっても、選任後はその九〇%以上が良い経験と感じたと回答しています。
実際、私も、裁判を身近に感じたと同時に、身近に様々な事件が潜んでいると実感する貴重な経験になったという感想です。

 このように裁判員経験者からは良い評価を得られている一方で、積極的な参加意向が見られない原因、どのように分析しているのでしょうか。

吉崎佳弥 最高裁判所長官代理者

お答え申し上げます。

 裁判員裁判に対して国民の参加意欲が高まっていないということの原因については、先ほどお話しした点も含めまして様々な事情が考えられるところでございます。

 一方で、先ほど委員御指摘のとおり、実際に裁判員をお務めいただいた方からは、参加したいことについて、参加したことについて高い評価をいただいているという状況にございます。
問題は、そのような高い評価が国民の皆様に十分に伝わっていないということ、そのような可能性がある点については御指摘のとおりでございます。

 そのような声をできるだけ国民の皆様に伝えられるように、広報活動などを通じて、様々なコンテンツを用いながら、より一層充実させていく必要があると考えております。

羽田次郎

昨年五月の少年法改正に伴い裁判員に選ばれる年齢も引き下げられ、今後は、十八歳、十九歳についても、今年の秋頃に対象年齢に達していれば来年以降の裁判員に選ばれることになります。
当事者意識を持たないまま、受験や就職活動の時期と重なるなどして辞退や選任手続期日を欠席する若者が続出すれば、辞退率、出席率が更に悪化するのではないかと懸念いたします。

 若者の負担への配慮を含め、辞退率、出席率の改善に向けた具体的な方策を大臣に伺いたいと思います。

古川禎久 国務大臣

答えいたします。

 裁判員裁判に幅広い年齢層の方々が参加していただくことは、刑事司法に多様な意見を反映するという点で極めて意義深いものでありまして、十八歳、十九歳の方々も裁判員となることができることについて、積極的な周知、広報が重要であるというふうに考えております。

 法務省では、これまで、法務省のホームページやツイッターで周知するとともに、成年年齢の引下げに関するリーフレットに裁判員になることのできる年齢についても記載した上、全国の高校生に配付をするなどの取組を行ってきたところでございます。
今後とも、十八歳、十九歳の方々を始めとする若い世代に対し、裁判員制度に関して広く周知がなされるよう努めてまいりたいと考えております。

 また、十八歳、十九歳の方々が裁判員裁判に参加するようになることから、今後ますます法教育の重要性が高まることになると考えております。これまでも、検察庁が全国の教育機関に提供している法教育プログラムにおいて刑事模擬裁判を行うなどしてきたところでございます。

 さらに、法務省では、教育専門家や文部科学省など関係機関と連携をしながら、子供の成長段階に応じて司法制度の意義等についての理解を深めていくプログラムの検討を進めております。

 法務省としては、引き続き、文部科学省等の関係機関と連携しながら、学校現場における法教育の一層の充実に取り組んでまいりたいと存じます。

羽田次郎

国民の積極的な参加意識を向上していただくことをお願い申し上げ、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

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